ふたつの背中を抱きしめた



もし、心も血を流すとしたら

私の手は真っ赤に染まってる事だろう。

綜司さんと柊くんの返り血で。


裏切る。傷つける。堕ちる。

なのに私は、笑ってる。


傷みに気付いてない綜司さんに笑いかけ

傷みの意味を知らない柊くんに微笑み返す。

残酷で卑怯でズルい女。

本当に2人を愛してるならどちらかの手を振り切るべきなのに。


泣かせたくない、と言うのはあまりに詭弁だろうか。


私を失いたくないと言った綜司さんの

私を好きになったのは間違いなのかと聞いた柊くんの

あの哀しみに彩られた瞳をもう見たくない、と言うのは。


このまま曖昧に
嘘と誤魔化しで塗り重ねた日々の中でたゆたいながら

私はきっと笑い続ける。


嘘を重ね、罪を重ね

2人の笑顔を守り続ける。

それがどんなに残酷な事か知りながら。




---私は、卑怯な女です。



< 119 / 324 >

この作品をシェア

pagetop