ふたつの背中を抱きしめた
「…大事にはしたくないけど、これは報告しない訳にはいかないから。
もちろん園長以外の人には言わないでおくけど、マルちゃんの口から誰かに伝わる可能性がある事は覚悟しておかないと。」
加古さんは、俯く私に冷静にそう言った。
このコトを知ったのが加古さんで良かったと思う。
もしこれが矢口さんやリエさんだったら、どんな事になっていたか分からない。
私は震える声で
「…すみませんでした…」
と加古さんに答えた。
「真陽ちゃんが謝るコトじゃないでしょう。」
そう言ってポンポンと肩を叩いてくれた加古さんの手がズシリと重く感じる。
婚約者のいる私。
普段評判の良くない柊くん。
私に『悪戯で』キスをしたと言った柊くん。
加古さんは柊くんが加害者で私を被害者だと思っている。
このままじゃ、柊くん1人が悪者になってしまう。
違う、そうじゃない。
柊くんをこんな行動に走らせたのは、私が原因だ。
会いたくて焦がれてた柊くんに全く応えてあげなかった私の責任だ。
柊くんの情熱を、甘く見ていたかもしれない。
私が欲しいと縋った子に何故こんなに我慢をさせてしまったんだろう。
ただ、ただ、
後悔と罪悪感ばかりが浮かぶ。
秘めた関係を持つには不器用過ぎた私達。
狂った歯車がさらに音をたてて狂い始める。