ふたつの背中を抱きしめた
「お願いだから、答えてよ真陽…。」
受話器の向こうの柊くんの声が涙に濡れる。
「…俺も真陽が欲しい。
どうすればいい?初めてなんだ、こんな気持ち。」
子供のようにしゃくりあげながら、柊くんは訴える。
「真陽が全部欲しい。失うのなんか絶対にイヤなのに…どうしたらいいのか、俺には分からないんだ。誰も教えてくれないんだ。」
電話を持つ私の手も、震えている。
「教えて、真陽…お願いだから答えて…」
崩れ落ちそうな柊くんの声は
私の心の1番深い所をギュッと掴む。
「…柊くん……」
涙につっかえながら
私は言葉を絞り出す。
「…好きだよ、柊くん。」
「…真陽…」
「好き。
好き。
…好き。」
それはもう、
偽りじゃ無かった。
答えの代わりに私は
柊くんの心が安らぐまで
ずっと愛の言葉を訴えた。