ふたつの背中を抱きしめた
『急でゴメン、職場の人たちと食事に行ってくるね。帰りは遅くなるかも。』
綜司さんに書いたメールを送ろうとして、私は長い時間送信ボタンを押せないでいた。
綜司さんに、初めて、嘘をつく。
緊張で手に汗が滲む。
喉がカラカラに渇いていく。
それは、今までの“隠しているだけ”とは明らかに違っていた。
欺く。綜司さんを。
私をあんなに愛してくれた人を。
世界で1番大切だと思ってた人を。
これ以上無い裏切りで、欺く。
何回も躊躇し
いつまでも迷って
そして最後に
乱れそうな呼吸を、深呼吸で整えて
私は送信ボタンを、押した。