ふたつの背中を抱きしめた
「ウソ!?いいの!?本当に!?」
柊くんの喜びようは私の想像以上だった。
「遠い所へ行こう。誰にも会わないような遠い所。待ち合わせも無しだよ。現地集合、現地解散。」
「いい!いい!全然構わない!」
私が穏やかに言った提案に、柊くんは勢い良く首を縦に振った。
「本当に?本当にいいの、真陽?」
まだ半信半疑で聞く柊くんに、私はにっこり笑って頷いた。
「やったぁ!!真陽大好き!!」
柊くんはそう叫ぶと、座っていた私に抱き付いて…いや、飛び付いてきた。
勢い良く飛び付いてきた柊くんの身体を支え切れるハズが無く、私はそのまま後ろにひっくり返った。
「真陽、大好きー!」
「重いっ!重いってば柊くん!!」
犬のように頬擦りをしてくる柊くんの全体重をのせた身体を、私は一生懸命手で押し退けながら言った。
「俺、今まで生きてきてこんなにワクワクするの初めてだよ。」
ギュウッと目を瞑って、幸せを噛みしめるように言った柊くんの笑顔を
私はきっと、一生忘れない。
神様。
この穢れのない子供のような笑顔は罪でしょうか。
この笑顔を守りたいと思った事は過ちなんでしょうか。
ねぇ、神様。