ふたつの背中を抱きしめた


その言葉に胸が痛み私は思わずきゅっと目を瞑る。


「…ごめん…柊くん。楽しみにしてたのに、本当にごめん…。」

「そうじゃなくって!」

電話越しに柊くんは突然声をあげた。


「…っ、すごい、心配したんだ…。
なのにどうするコトも出来なくて…

…なんで俺は真陽が辛い時に傍に居てあげられないんだって…こんな時にどうして離ればなれなんだって…それが悔しいんだ!!」


そう言った柊くんの声は、涙声で。

私は言葉を失って、ただ携帯を握り締めていた。


「真陽のメール見た時、びっくりしたんだ。

いっつも丁寧なメール送ってくる真陽が、短くて誤字だらけのメール送ってくるなんて。お祭りに行けなくなったコトよりそっちの方がショックだった。

よっぽど具合が悪いのか…傍に誰か居てまともにメールを打ってらんないのか。

すぐに電話したかったけど、もし傍に誰か居るんだったら…真陽に迷惑かけちゃうから。」

時々、鼻をすすり上げながら柊くんは言った。

「仕事も休んでるって、熱が高いらしいって聞いても俺にはどうするコトも出来なくって...。」

「柊くん…」

「真陽が辛い思いしてるかも知れないのになんで俺は傍にいてあげられないんだろうって、

そんで...きっと今、真陽の傍には婚約者のヤツが居て、ソイツが真陽の看病してるのかと思うと…俺、スゴい悔しくてっ…」


電話の向こうの柊くんは、そう言って辛そうに泣いていた。



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