ふたつの背中を抱きしめた
3.傾いた天秤
「もう、真陽が誰かのモノなのは嫌なんだ…!」
そう言った柊くんの言葉は、誰かを好きになったなら当たり前の感覚だと思う。
柊くんに、私は辛すぎる恋をさせてる。
初めて誰かを愛するコトを知った男の子に、私は酷い想いを強いている。
独占するコトを許さず
夜ごと婚約者の腕の中にいる私に想いを馳せさせて。
彼の笑顔が見たくて始まったはずのこの関係は
いつしか涙の方が多くなっていて。
間違っていないって信じていたはずなのに。
私達の胸には苦しさばかりが降り積もってゆく。
なのに
私は今すぐに彼を救ってあげられない。
「…少し、考えさせて…。」
そう言った私に、柊くんは電話の向こうで息を呑んだ。