ふたつの背中を抱きしめた
「…っ、ごめん真陽!嘘だから!今の、嘘だから!」
柊くんは慌てて言った。
そして、
「ごめん、もうウザいこと言わないから!だから…!」
その先の呑み込まれた言葉は、言わなくても痛いほど伝わってきた。
電話の向こうの柊くんは怯えていた。
彼は知っている。
過ぎたワガママはときに全てを失うコトになると云う事を。
独占出来なくていい、恋人と呼べなくていい。
…だから……別れないで…!
俺を捨てないで…!!
辛すぎて吐露した本音を必死にかき消して
柊くんは私にすがる。
綜司さんと別れるとすぐに言ってあげられなかったコトが
私の逡巡が
柊くんを怯えさせた。