ふたつの背中を抱きしめた
大丈夫だからと必死に説得したものの、私は園長と心配したスタッフにそのまま早退させられてしまった。
しかも綜司さんに送ってもらっていたのをバッチリ見られていたため、私の了承より先に綜司さんに迎えを頼む連絡が行っていたと知り、私は本気で困り果てていた。
大したこと無いのに、みんなにとても心配と迷惑を掛けてしまった。
しかも綜司さんに至っては昨日の今日でこれだ。どれだけ心配することだろう。
申し訳なさすぎて自分が嫌になる。
ため息をつきながら帰り支度を整えてると、スタッフの1人が「お迎え、来たわよ」と知らせに来てくれた。
憂鬱な気分で廊下を歩いてると子供達が私を見つけ駆け寄ってきた。
「まひろちゃん、びょうきなの?」
「はやくよくなってね。」
「なおったらいっしょにあそぼうね。」
子供達にまで余計な心配をかけてしまって、情けなさと申し訳なさで涙が滲んでくる。
「ごめんね、明日は必ず元気になって来るからね。」
そう言って1人1人の頭を撫でて子供達を安心させてから、再び玄関に向かって歩き出した私は
ある光景を目にし足を止めた。
それは…玄関で何かを話しているリエさんと綜司さんだった。
私に気付いたリエさんが、綜司さんにペコリと頭を下げてこちらへ戻ってきた。
そして、私の脇を通る時に
「あんまり婚約者さんに心配かけちゃダメだよ。お大事に。」
そう囁いて、リエさんは通り過ぎて行った。
思わず見やった視線の先の綜司さんの瞳は
私を映してるのに
私を見てはいなかった。