ふたつの背中を抱きしめた
カバンを部屋に置いてきた私がリビングに戻ると綜司さんがアイスティーを淹れて待ってくれていた。
「ありがとう。」
お礼を言ってよく冷えた紅茶をひとくち飲むと身体中が心地好い涼しさに包まれた。
「体調、どう?」
綜司さんがじっと私の顔を見る。
「大丈夫だよ。ほんと心配ばかり掛けちゃってごめんね。」
そう言ってグラスの氷をストローでカラカラまわす私を見つめながら、綜司さんは短い深呼吸を1回して吐き出した。
「…真陽…前に言ったよね。困ったコトがあったらなんでも言ってって。」
「…綜司さん…?」
「真陽、今、悩んでるよね?今日の過呼吸だってそれが原因だよね?」
「…ちよ、ちょっと待って綜司さん。急に、なに?」
また、私の呼吸が乱れそうになったのを見て、綜司さんが立ち上がって私の背中を押さえた。
「真陽、深呼吸して。」
綜司さんに言われて私は意識してゆっくりと呼吸を整える。
そして、そんな私を見て背中を撫でながら綜司さんが言った。
「真陽、落ち着いて聞いて。
今、真陽が悩んでる原因って…柏原柊って子のコト、だよね?」
綜司さんの口から不意に発せられた柊くんの名に
私は全身を硬直させた。