ふたつの背中を抱きしめた
2.さよなら、綜司さん
「真陽、こんな時に変な冗談良くないよ。」
驚くほどに、いつもの笑顔。
「冗談じゃ…ないの。」
「悪ふざけやめよう。真陽らしくないよ。」
少しだけ、笑みが消えて。
「本当なの。ごめんなさい綜司さん。」
「真陽…疲れてるんだよ。自分で何言ってるか分からなくなってるよ。」
困ったような、笑い顔。
「違う 。私…綜司さんを裏切ってしまったの。だから、もう…」
「やめよう、こんな話。意味が無いよ。」
消えた、笑み。
「ごめんなさい…どんな責任でも負うつもりです。」
「真陽、いい加減にしよう。」
聞いたことのない、抑揚の無い声。
見たことのない、無表情の顔。
「…婚約を…破棄して下さい。」
そして
「いい加減にしろって言ってるんだ!!!」
初めて見る
綜司さんの絶望の顔。