ふたつの背中を抱きしめた
1章 綜司さんを、愛してる
1.綜司さんを、愛してる
「真陽、結婚して欲しい。
一生僕の傍に居て下さい。」
綜司さんがそう言ったのは私が大学を卒業した日の夜だった。
開きかけの桜の木の下でされたプロポーズに、私は天にも昇る気持ちでそれに答えた。
「私なんかでいいの?」
「真陽じゃなきゃ駄目なんだ。」
「…嬉しい、綜司さん。私も綜司さんが大好き。愛してる。」
目に涙を浮かべながら飛び込んだ綜司さんの胸の中で
私は今、世界一の幸せ者だと感じていた。
綜司さん
私の初めての恋人。
私が初めて愛した人。
いつだって
優しくて穏やかで
「真陽。」
柔らかく低い声で
愛しそうに私を呼ぶ。
そんな綜司さんが大好きで
私はこの時、
一生この人の傍に居たいと
願った。
その気持ちに
偽りは、無かった。
それは
柊くんに出会う
1週間前のコト。