ふたつの背中を抱きしめた
大学4年生の夏に、私は就職先を決めた。
もちろん職種はずっと目指し続けてきた児童福祉の仕事だ。
ただ、大学の四年間でボランティアや授業で様々な施設を見て考えた結果
公的な福祉施設では無く、私はNPOが運営する児童福祉のサポート機関を職場に選んだ。
そこは公的機関と連携していて、児童養護施設が満員の時に子供を一時預かりしたり、
理由があって公的施設を使いたくない人の子供を預かったりするのが主な活動だ。
またクリスマス会やバーベキューを開催して養護施設の子を招いたり、児童福祉への理解を呼び掛ける講演会や啓蒙活動も行っている。
私はここがとても気に入っていた。
周りからはせっかく資格をとったのだから公的な福祉施設へ就職すればいいのにと言われたけど
古い幼稚園を再利用して作られた子供達の笑い声が染み込んでいそうな建物に
「子供達を笑顔にする仕事」と掲げられた、お祖母ちゃんにとてもよく似た理念とそれに準じる温かいスタッフ
それに、子供達が製作したと云う『ぬくもりの手』と書かれた優しくて力強い看板が
私の心をとても惹き付けた。
大学3年でここを知った時から私はボランティアにせっせと通うようになり
スタッフや団体代表の雉(きじ)さんともすっかり打ち解け
卒業後にここのスタッフになる事は私にとってとても当たり前の事のような気がした。