ふたつの背中を抱きしめた
綜司さんが立ち上がった勢いで倒れたグラスから零れたアイスティーが床を濡らしていく。
広がっていく染みはまるで綜司さんの瞳に落ちていく悲しみの色。
「聞きたくない…!そんな話!真陽が僕を裏切るんなんて、有り得ないだろう!」
「ごめんなさい…っ、ごめんなさい!!」
私は息が乱れないように呼吸を整えながら、綜司さんの足元に蹲って頭を下げた。
「全部、全部私が悪いの!私が…綜司さんのものだと分かっていながら柊くんの手を取ったの!ごめんなさい!罰は全部私が受けます!」
「やめろ!そんなコトしてなんになる!」
綜司さんが私の腕を掴んで無理やり立たせる。
その勢いで近くに見えた綜司さんの顔色が、驚くほど悪い。
今にも倒れそうなほどに。
「…綜司…さん…」
思わず触れてしまった頬はヒヤリとするほど冷たくて。
ふいに伸びた私の手に、綜司さんが驚きの表情を浮かべた。
そして、見開いた瞳に私を映しながら
「…夢なら…覚めて…」
と、呆けたように呟いた。