ふたつの背中を抱きしめた
私はきっと心のどこかで
綜司さんは私が居なくても大丈夫だと思っていた。
いっとき、傷付き悲しみに落ちたとしても、彼を支えてくれる人は沢山居るのだから、と。
時間がかかってもいつかはまた、綜司さんは別の人を選んで幸せな人生を送れるだろうと、そう考えていた。
でも柊くんは違う。
あの子はきっと私を無くしたら生きていけない。
私と云う温もりを奪い再び孤独へと追いやったら、心を塞いで自分の人生を諦めてしまいかねない。
だから。
離すべき手は、綜司さんの方だと思った。
そんな私の考えが間違っていた事を、目の前の現実が突き付ける。
病院の白いベッドに横たわる綜司さんを見ながら私は呟く。
「…っどうして…っ?綜司さん…!」
込み上げる涙と共に。