ふたつの背中を抱きしめた



私と義母様を病室の小さなソファーに座らせて、義父様は自分は備え付けのパイプ椅子へと腰を下ろした。


「薬の吸収が浅かったので命に別状は無いそうです。起きてもしばらくは朦朧とするかもしれないとお医者さんは仰ってました。」


私がそう説明すると義母様は少しだけ落ち着きを取り戻した。


そして義父様は

「そうか、薬で良かったな。飛び降りだったら二度目は無かっただろうからな。」


と言った。


言葉も出ず目を見張った私に義父様は力無く頭を下げた。


「黙っててすまなかった、真陽ちゃん。

…綜司が自殺を図ったのはこれが初めてじゃないんだよ。」



そう言った義父様の言葉に

私は目の前が一瞬で暗くなったような錯覚がした。



< 210 / 324 >

この作品をシェア

pagetop