ふたつの背中を抱きしめた
「多分、俺もうすぐ誕生日なんだ。」
ある日の夜、私の作ったクリームシチューを美味しそうに食べながら柊が突然そんな話をした。
「多分なの?」
テーブルの向かい側で同じようにシチューを食べながら目を丸くした私に、柊はスプーンを口に運びながら頷いた。
「ホントの誕生日はわかんねーし。
拾われたのが年末で、そん時まだ新生児だったらしいから、多分12月生まれなんだよ。」
とんでもなく悲しい事実を柊はあっけらかんと言った。
「『柊』って名前からして冬生まれなのは間違いないだろうけど。」
それは、彼が唯一親から与えられたもの。
たった1つ親からもらったもの。
けれど
「辛気臭い名前だよなあ、『柊』って。木に冬なんて枯れ木みたいじゃん。俺この名前キライなんだ。」
柊はそんな悲しい台詞を事も無げに吐き出す。