ふたつの背中を抱きしめた
まもなく、私達が式を挙げるチャペルは
ホテルに併設されたよくある結婚式用のものではなく
時に教徒の人が祈りを捧げに来るれっきとした礼拝堂で。
その厳粛さが気に入って、その時は選んだのだけれども
今となってはあまりの皮肉さに笑うしかない。
人々が神に祈りを捧げる神聖な場所で
こんな私が神に何を誓うと言うのか。
新郎である綜司も
綜司のご両親も、招待客の彩ちゃんも園長も
皆が新婦である私の罪を知っていると言うのに祝福を受けようだなんて
まるで愚かで陳腐な戯曲のようで滑稽だ。
そんな滑稽な芝居を神様の前で演じる私達は
いったいどんな罰を受けるのだろう。
「真陽?」
そんな思いでチャペルを遠目に眺めていた私に、綜司が心配そうに声をかけてきた。
「どうかした?ぼーっとしちゃって。」
式の打合せに2人で来た帰りだった。
もう打合せも最終段階。まさしく秒読みだ。
私は振り返って綜司の顔を見上げた。
ねえ、綜司はどんな気持ちでもうすぐ神様の前に立つの?
言葉には出さずその思いを込めて彼の瞳を見つめた。