ふたつの背中を抱きしめた
2.柏原柊の約束
ーーーそれは
もう冬の気配がする11月の下旬だった。
ぬくもり園の園庭の大きな桜はすっかり茶色い葉になって
強い風が吹くと葉吹雪のようにそれを舞い散らせていた。
その光景を見ながら、私は七ヶ月前の春の日を思い出していた。
まだ桜がピンクの花弁を付けてた頃。
花吹雪の下で
柊の黒い瞳に捕らえられた。
今思えば、あの時からもう
私は彼から目が離せなかったんだと思う。
あの強い瞳に射すくめられて
もう逃げ出せなかったのだと。
子供達を園庭で遊ばせながらぼんやりとそんなコトを考えていた私の元へ、バタバタと足音をたてながら加古さんが走ってきた。
「真陽ちゃん、緊急招集。
子供達はボランティアさんに見ててもらってスタッフは全員スタッフルーム集合だって。」
「緊急招集?何かあったんですか?」
そう聞いた私に加古さんは口ごもりながら答えた。
「…よく分からないけど…今、スタッフルームに柊くん来てるみたい。」