ふたつの背中を抱きしめた
「…えっと…
…お世話に、なりました。
なんか色々迷惑とか掛けちゃったけど、ここに居られて楽しかったです。
ありがとう…ございました。
…あの…、
俺、これから児童福祉でちゃんと働けるように勉強してきます。
だから…その、なんて言うか
いつになるか分かんないけど、またいつの日かみんなと働けたら、いいなって…
~っ、ああ、もういいや。上手く喋れない。園長、もういい、俺からはこれでおしまい!」
人前で喋るコトに慣れてない柊は、真っ赤になりながら一礼するとそそくさと園長の脇に引っ込んだ。
話の概要が分からずに首を捻る人も居たけど、
あの柊が最後に不器用ながらも皆に感謝を、好意を素直に伝えたコトに
矢口さんを初め、涙ぐむほど感動しているスタッフも少なくなかった。
上手く伝えられなかった柊の話に、園長が笑顔でフォローを入れてくれた。
「柊くんはね、保育士の資格を取得するためこれから私の知り合いの隣県の児童福祉施設で3年間働きに行きます。
主に独学での受験になるので厳しい部分も沢山あるだろうけど、私も出来る限り協力していきたいと思ってます。
でもね、柊くんなら大丈夫。誰より子供達に優しくて強い意思を持っているんですものね。
だから、きっと近い将来に同業者として肩を並べた柊くんとまた一緒に働ける日が来ることを私も信じています。
柊くん、みんな待ってるから頑張るのよ。」
そう言って手を差し出した園長に、柊は握手を返した。
表情は少し照れ臭そうだったけど
その瞳には強い意思が宿っていた。