ふたつの背中を抱きしめた
夕方になって。
私は1人、スタッフルームで遊戯室の壁に飾る色紙の植物を作っていた。
もうすぐ訪れる12月の飾りは、ポインセチアと…柊(ヒイラギ)だった。
ジョキジョキと懸命に鋏を動かしていると、カラカラ…と遠慮がちに扉が開いた。
「…真陽…。」
中を窺うようにしてそっと入ってきたのは
柊だった。
「…今、1人?」
「うん。…柊、帰るの?」
既に帰り支度を済ませた柊の姿を見て尋ねた。
「うん。引っ越しの準備で忙しいし、もう帰る。」
何気なく言ったそのヒトコトに私はまたショックを受ける。
「…やっぱり引っ越すんだ?」
「うん、さすがにこっからじゃ通いきれなくって。」
「いつ?」
「もう明日には荷物運ぶよ。12月から働き始めるし。」
「っ!?そんなに早いの!?」
「むこうでちょうど12月から産休に入る人がいるんだって。だからその代わり…」
「そうじゃなくって!なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」
思わず声を荒げた私の目は、涙に滲んでいた。