ふたつの背中を抱きしめた
ーーー私、結局、キミに何がしてあげられたんだろう。
ただ、刹那の安堵と手に入らない温もりしか与えられなかった気がする。
なのに、柊はこんな素敵な約束をくれるんだね。
ありがとう、柊。
私にとってもう既にキミは立派な一人前だよ。
「真陽に似合う婚約指輪用意して来るから楽しみにしてて。」
「うん。」
「お祭りの約束はその時な。今度こそ一緒に行こう。」
「うん。」
「俺がいない間、ちゃんとメシ食えよ。あんま痩せるな。ちんちくりんなんだから。」
「うん。」
泣きじゃくる私の髪を柊はゆっくりゆっくり撫でてくれた。
あの夏にぎこちなく私の髪を撫でてくれた同じ手で。
私はふと、机の上にある色紙の葉っぱに目が止まった。
「そうだ、柊。これがヒイラギだよ。ほら、綺麗でしょ。」
突然、柊の胸を離れて机の色紙を手に取った私に柊がキョトンとした。
そして私の手から色紙のヒイラギを受け取るとニッと笑って
「ホントだ。なんかカッコいいじゃん。」
と嬉しそうに言った。