ふたつの背中を抱きしめた
「真陽さんに、会わせてもらっていいですか?」
病室に入った柊は歩みを進める前に綜司に向き直ってそう尋ねた。
「構わないよ、その為に来たんだろう?」
綜司はそう答えると柊が手に持っていた荷物…花束とフルフェイスのバイク用のヘルメットを受け取った。
「あ、すいません。」
綜司はヘルメットを丁寧にテーブルに置き、花束を覗き込んだ。
「これ、真陽に?」
「そうです。もし良かったら飾って下さい。」
「…珍しいね、この季節にヒイラギなんて。」
「探すの、苦労しました。でもこれしか思い浮かばなくって。」
そう言ってクシャリと人懐っこそうな笑顔で笑った柊に、綜司は顔には出さないまま少しだけ奥歯を噛みしめた。
きっとこのヒイラギには
ベッドに横たわる女性…彼の妻である真陽と、目の前の青年の
自分の知らない想い出が籠められてるのだろうと。
そう考えると、綜司の胸はジワリと痛んだ。
けれど、綜司はそんな様子はおくびにも出さず
「ありがとう、真陽きっと喜ぶよ。後で飾らせてもらう。」
柊に礼を言って穏やかに微笑んだ。