ふたつの背中を抱きしめた




柊は綜司の正面に向き直ると、突然深々と頭を下げた。


ソファーに腰を掛けていた綜司は表情を変えずに


「なに?」


と聞いた。



「すみません、浅葉さん。

俺、実は今日、貴方の奥さんにプロポーズしに来たんです。」



柊の口から飛び出したあまりにも無礼な発言に、綜司は一瞬目を丸くしたものの

すぐにいつもの穏やかな表情に戻って、溜め息を1回吐いた。


そして正面にいる柊をじっと見据えた。



琥珀がかった瞳と

強い黒の瞳の視線が絡まる。




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