ふたつの背中を抱きしめた
パタン、と静かにドアを閉めたあと
綜司は手のひらに受け止めたままのピンクの花弁に視線を落として呟いた。
「想像以上に困ったヤツだね。真陽、よくあんなの手懐けたね。」
と。
手の中の花弁はフワリと一瞬はためいて
それを見た綜司は
「…まあ、真陽らしいよね。」
と困ったように笑った。
「やった、やっと2人きりになれたっ♪」
綜司が扉を閉めたのを見届けてから、柊は満面の笑顔を溢して真陽のベッドに駆け寄った。
「あいつ、真陽にキスとかしないようにーだって!心狭いよなぁ。こちとら5年ぶりの再開なんだからするっつーの!」
柊はニヤニヤと溶けそうな笑顔を浮かべて、器具のコードを避けながら真陽の顔に近付いた。
穏やかに眠る真陽の唇は
長い間意識が無くとも綺麗に手入れされ薄桃色のリップが塗られていて
柊はその唇に優しくキスをひとつ落とした。
「ただいま、真陽。」
心の底から沸き上がる愛しさを噛み締めながら。