ふたつの背中を抱きしめた



春の柔らかな陽射しに照らされる真陽の顔は

柔らかく微笑んでるようにも見えて

柊はその優しい表情に思わず頬を染めた。


「…やっぱ真陽は可愛いなぁ。」


そう言いながら柊はポケットから小さな箱を取り出して、真陽の目の前でそっと開いた。


「…約束通り、用意して来たよ。婚約指輪。」


可愛いらしくリボンの施されたケースに収まっていたのは 、ピンクの石が付いた愛らしい指輪だった。


「…真陽…俺と結婚しよう。一生大切にするから。」


そう言った柊の瞳は

幸せと自信に満ちていて。

5年前に浮かべていた哀しい色は、もうどこにも無かった。




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