ふたつの背中を抱きしめた
「俺、5年前あんたが左手に婚約指輪してるのが本当にイヤでさあ。
それがこうやって今度は俺の指輪嵌めてもらおうとしてるんだから、俺も成長したよなあ。」
柊は照れたように笑いながら、ケースから取り出した指輪を真陽の指に嵌めようとした。
けれど
真陽の手を取って、柊は気付く。
左手の薬指には、今度は婚約指輪じゃない
結婚指輪が嵌まっている事に。
そして、シンプルなプラチナのリングに合わせたように
真陽の爪は淡い水色のネイルで女らしく彩られ
その手はリングにもネイルにも負けないぐらい美しく瑞々しくすべらかだった。
「………」
その手を握りしめたまま柊は押し黙り
やがて、自分のリングをケースに戻した。