ふたつの背中を抱きしめた
「あら、イイ匂い。ハーブティー?」
「はい、カモミールです。」
「珍しいわね、男の子がハーブティーなんか飲んでるの。」
先輩職員の北見さんが、そう言って俺に笑いかけた。
俺はそれに微笑み返して、湯気のたつカップに口を付ける。
温かい液体と一緒にふわっと口いっぱいに甘い華の香りが広がった。
秋の肌寒い午後。
職員室の窓には細かい雨が打ち付けていた。
…俺があの女(ひと)にこのハーブティーを教わったのも、こんな雨の日だった。
思い出すと、今でも苦しいくらい胸が締め付けられる。
真陽。
誰より愛しいあの女(ひと)の元を離れて4年が経とうとしていた。