ふたつの背中を抱きしめた
2.幼なじみと恋心
私と綜司さんは、
言わば“幼なじみ”だった。
家が隣同士で4つ年上の綜司さんを私はお兄ちゃんのように慕ってたらしい。
…らしい、と云うのは実は私はそのコトをよく覚えてないから。
綜司さんと幼なじみだったのは私が5歳の時までで。
その年の春、我家は父の仕事の都合で東京から地方へと引っ越していった。
おぼろげな記憶の中で私がハッキリ覚えているのは
「忘れないで真陽、僕の事絶対に忘れないで。」
別れ際にそう言って泣いた少年だった綜司さんの顔。
泣きじゃくる綜司さんに幼い私は
「そうたん、泣かないで。イイコだから泣かないで。」
と舌足らずな口調で慰めながら
一生懸命、彼の頭を撫でたのを覚えている。