ふたつの背中を抱きしめた
「あなた達、ホント仲良しよね。兄妹みたい。」
そう言った北見さんに俺はぶんぶん首を横に振って見せたが、彼女は俺の方を見ずそのまま職員室から出ていってしまった。
「そんな全力で否定しなくてもいいじゃん。せっかくいい話持ってきてあげたのに。」
コーヒーを飲みながら亜子は俺の机に寄り掛かって話し続けた。
「今日の帰り、うちの店おいでよ。父ちゃんが新しいパーツ来たの見せてくれるってさ。」
「マジで!?行く行く!…っつっても金無いから見るだけな。」
「分かってるって。愛しの君の為にせっせと貯金してんでしょ。泣けるねー。彼女の為に大好きなバイクいじりも我慢して節約してるなんて。」
「ふざけんな、そもそもバイクなんて金の懸かる趣味教えたのはお前じゃねーか。」
まあね、と笑いながら亜子が続けた。
「来年、プロポーズ行くんでしょ。カッコいいバイクで迎えに行ってやんなよ。」
「言われなくても。」
俺はそう答えて、まだ湯気のたつカップに口を付けた。