ふたつの背中を抱きしめた
真陽。
今度は俺が貴女に何かを教えてあげられたらいいと思う。
沢山の人と出会い沢山の事を積み重ねて俺が得てきた全てを、貴女に。
両腕に抱えきれないほどのお土産話と一緒に。
ハーブティーが上手に淹れられるようになった事も
バイクの風が気持ちいい事も
友達が、出来た事も。
みんなみんな早く貴女に伝えたい。
例えずっと眠り続けててもいい。
今度こそ貴女の一番傍に居られるように。
俺、頑張ってるから。
だから、もうちょっとだけ待ってて。
雨の降り続ける窓の外を見ながら、俺は大きく伸びをした。
「さて、そろそろ子供達が帰ってくるしタオルでも準備しとくか。」
職員室から出た俺の後を亜子がついてきた。
静かになった職員室には、まだ仄かに甘い華の香りが残っていた。
―――fin―――