ふたつの背中を抱きしめた
それでも綜司さんは怒るコトも拗ねるコトも無く
「なんで真陽が謝るの。真陽はよく頑張ってるよ。疲れてる時ぐらい遠慮なく甘えなさい。」
そう言って私の頭をヨシヨシしてくれた。
その優しさが嬉しいやらますます申し訳ないやらで、私はリーフレットに落とさないように気を付けながら大粒の涙を零した。
「優しいよね、真陽ちゃんのカレ。大事にしなきゃダメだよ。」
「分かってる。でも今は大事に出来る時間がないのがもどかしい。」
リエさんと私は空になった洗濯籠を抱えて裏庭から園内へと戻って行った。
私に婚約者がいるコトは正規スタッフならみんな知っている。
配偶者の有無は仕事にも関わってくるので公式情報として当然だ。
ただし、その婚約者がどれほどステキな人かと云うことは仲良しのリエさんと園長ぐらいしか知らない。
あとは仲良くなった大学生ボランティアさんにちょっと話したコトがあったかな。
私だってたまには惚気を吐き出す時だってあるのだ。
それにしても。
私が多忙なせいで具体的な結婚の段取りがなかなか進まない。
次のお休みには延び延びになってる結納の話し合いを進めなくっちゃ双方の親にまで迷惑をかけてしまう。
久々の休日に疲れた体をベッドで横たえたい気持ちはあるけど
「早く綜司さんと夫婦になるためだもんね」
そう呟いて私は自分の頬をパンパンと両手ではたき気合いを入れた。