ふたつの背中を抱きしめた
今年の梅雨入りは早い。
5月の半ばだと云うのにお天気は連日雨ばかりで、元気が盛りの子供達のストレスは溜まるばかりだ。
今日も遊戯室から子供の泣き声が聞こえる。
慌て飛んでいくと、小学校低学年のユウキくんが高学年のタイチくんに泣かされていた。
「オレ、なんにもしてないのにタイチが叩いたぁー!」
ユウキくんは足をジタバタ踏みならして泣き喚いている。
一方のタイチくんは唇を噛み締めて俯いていた。
駆け寄った私は2人まとめて抱き寄せるように頭を撫でる。
「そっか、ユウキくん痛かったね。よしよし。タイチくんもなんかあったんだよね。後で私とお話しよっか?」
そう言って2人の小さな頭を撫でているとユウキくんがしがみついて泣いてきたので、私はその小さな背中を抱き寄せてあげた。
ここに居る子はただでさえストレスや不安でいっぱいなのだ。
少しでもそれを解消してあげたい。和らげて安心させたい。それが私の仕事だ。
「タイチ、おいで。」
その声に振り向くと、柊くんがこちらに向かって手招きしていた。
タイチくんはするりと私の手から抜け、俯いたまま柊くんの元へ歩いていった。
そのまま2人で遊戯室を出ていくのを、私はユウキくんを胸に抱き寄せながら見つめた。
柊くん、いたのか。
私がユウキくんとタイチくんいっぺんに慰めてたのを見て助けてくれたのかもしれない。
あとでお礼を言っておこうっと。
私は考えながらギュウギュウとしがみつくユウキくんを撫で続けた。