ふたつの背中を抱きしめた



6月になり忙しさのピークは過ぎたものの、現在預かっている子供は定員の10人に達しており
やっぱりスタッフはてんやわんやと業務に追われていた。

しかも今は小学生の男子が多いので週末や下校後の遊戯室は大騒ぎだ。


「コラー!遊戯室でサッカーはダメでしょー!」

「喧嘩しないの!ゲームは順番を守りなさい!」

スタッフやボランティアさんのお説教が飛び交う。

いつもは温厚なリエさんも珍しくカリカリしてるみたい。

遊戯室は元気な子供の熱気で溢れ目が離せない。

私も、机の上によじ登って飛び降りようとしてる男の子を発見し慌てて駆け寄る。

「元気いっぱいだね。でも怪我したら危ないから違う遊びしよう。」

声をかけながら机の上の男の子を抱き下ろした。

けれど、困ったな。
どの子も体力持て余してる。

園庭で遊ぶにはもう時間が遅いし…なんとかしてあげたいけど。


考えあぐねていると子供達が急に静かになっていった。

「え?」

ビックリして見渡すと、男の子達が皆、柊くんに群がっていた。

あぐらをかいて座り込んでる柊くんをグルリと囲むように子供達が何かを覗き込んでる。

「これゼンブ柊の?」
「すげー見して見して!」

さっきまでピンボールのように好き勝手に暴れ回ってた子供達が、一気に柊くんに集まり大人しくなっていった。

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