ふたつの背中を抱きしめた
一体どんな魔法を使ったというのか。
驚いて他のスタッフ達と一緒におそるおそる柊くんの手元を覗き込む。
子供達が興味津々に見ていたそれは…カードゲームだった。
「柊くん、それダメでしょう。」
すかさずボランティアさんの1人が注意をする。
カードゲームはうちの園では禁止だ。なぜならとてもトラブルになりやすいから。
「今、ここでだけならいいだろ。俺のだし。」
柊くんがムッとした顔で答える。
「マズいよ、柊くん。矢口さんに見つかったら怒られるよ。」
リエさんが心配そうに言うけれど柊くんは聞く耳を持たない。
「これ全部柊が集めたの?」
「そう。すげーだろ。」
「このカード俺も持ってた!」
「あっ、レアだ!いいなー」
困惑する大人達をよそに、男の子はすっかり和気あいあいとカードゲームで盛り上がっていた。
…男の子って本当カードゲームが好きなんだなぁ。
私はカードゲームの人気にも、それを利用した柊くんの機転にも、ただ感心していた。
「知らないよ、もうどうなっても。」
ボランティアさんが呆れたように言った。
「どうしようね、真陽ちゃん。」
リエさんも困ったように私に言った。
「うーん…とりあえずもう子供達夢中だし。今だけってコトでルールを徹底させるしか無いんじゃ…」
「そんなの、子供達守るかなぁ。」
「そこはホラ、持ち主の柊くんに任せようよ。
ね、柊くん!」
私が柊くんに振ると、柊くんは子供達と話をしながら片手をこちらに上げて応えた。