ふたつの背中を抱きしめた



園長に、柊くんの話を聞いてから
私は上手く柊くんの顔が見られなくなった。

どんな表情を向けていいのか、分からなくて。

あの哀しい色の瞳で見つめられたら、私は自分が柊くんにどんな顔をするか分からなくて。


その時、憐れみの表情なんて浮かべたら彼はきっと心を硬く閉ざして私に笑顔を見せる事は一生なくなるだろう。


そう思うとなんだか、ぎこちなくなってしまう。



そんな風に私が戸惑いながら過ごしていた時だった。


子供達が学校に行ってる間に園庭の伸びきった桜の木の枝を剪定していると
跨っている脚立に誰かが手を掛けた。

振り向くと

「代わってやる。あんた危なっかしくて見てらんない。」

そう言って柊くんが剪定鋏を貸せと言わんばかりに手を伸ばしていた。



私は柊くんの厚意をありがたく受け、彼の乗っている脚立を押さえた。


「気を付けて。」

「平気だよ。あんたと一緒にすんな。」

柊くんはそう言って器用に脚立の上で体を動かし枝を切り落として行った。

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