ふたつの背中を抱きしめた
いくらなんでも、ホームパーティーに誘っても柊くんは来ないよね…。
私はスタッフルームで自分の席の斜め前に座る柊くんをチラリと上目遣いで見た。
きっと楽しいし参加させてあげたいけど、いきなりハードル高過ぎるか。
考え直して机の上の書類に視線を戻すと
「何?」
柊くんの方から私に声を掛けてきた。
「え?」
「さっきから俺の方チラチラ見てただろ。何か用か?」
ありゃ、そんな気付かれちゃうほど私見てたのか。
「えーっと、別に用事って言うワケじゃないんだけど…」
何か話題を探そうと目を泳がせる私を、柊くんがジッと見ている。
…柊くんて、人のコトをジッと見つめるよなぁ。
なんだか、その深い黒で心の中まで見透かされてるみたい。
「…柊くんは…友達って、いないの?」
気が付くと私は、以前から気になっていた事をポロリと口にしていた。
「いない。」
即座に、キッパリと、答えが返ってきた。
「…バイト先とかで仲のいい人とかは?」
「いない。俺バイト先でも厄介者だし。」
なんで。
なんでそんな哀しいコト、平気で言うのよ。
机の書類に目を落としたまま淡々と答える柊くんを、私は持っていたペンを握り締めながら見ていた。