ふたつの背中を抱きしめた
4.幼なじみの花嫁
出勤した私は園門の前で足を止め溜息をひとつつく。
せっかく綜司さんの美味しい朝食でお腹も心も満たして来たというのに。
「柊くん、今日来てるのかな…」
やっぱりいざとなると昨日の事が重くのしかかって園内へ進む足を鈍らせる。
それでも、いつまでもグダグダしているワケにもいかないので
私は気を取り直して園内へと向かった。
「…おはようございまーす…」
スタッフルームの扉を恐る恐る開くと、そこには園長と濱口さんしかいなかった。
タイムカードを押し、壁に掛かっているホワイトボードで今日参加予定のボランティアさんを確認する。
柊くんの名前は…今日は無かった。
いや、無かったんじゃない。
消してあった。
白いボードに1度書いた名前を雑に消した痕跡が残っていた。
…柊くんが、自分で消していったんだろうか。
私の胸が、鈍く痛んだ。
きっと
昨日あれから怒った柊くんが自分で消したのかもしれない。
私に会いたくなくて、今日来る予定を取り消したのかもしれない。
もしも…もう二度と来てくれなくなっちゃったらどうしよう。
そう考える私の胸はどんどん痛くなってきて
私は哀しみに表情が崩れそうになるのを唇を噛み締めて必死にこらえた。