ふたつの背中を抱きしめた
「いつでも遊びに来てね、真陽ちゃん。綜司のコト宜しくね。」
夕方になり、帰る私を義両親は門の外まで見送ってくれた。
本当にいい人達だと、私は感心の溜息をこぼす。
こんな素敵な義両親と家族になれるのだから私は本当に恵まれている。
こんなに恵まれた結婚をするんだもの、幸せにならなくっちゃね。
ううん、私が幸せにしなくっちゃ。綜司さんを。義両親を。
帰りに義母様がお土産にと持たせてくれた幾つもの紅茶の葉っぱを入れた紙袋が
ズシリと幸せの重さのように私の手に響いていた。
「綜司さんの御両親て本当に素敵な方ね。」
晩ご飯の席で、私は綜司さんに今日の事を報告していた。
お休みなのでいつもよりウデを奮った食事を綜司さんは嬉しそうに目を細めながら口に運び、私の話を聞いてくれた。
「…そうやって笑っていると綜司さんは義父様によく似てるね。」
今日見た義父様の笑顔を思い出して、私はなんとなく呟いた。
本当に深い意味は、無かった。
けれど
「…似てる…かな?」
戸惑いを露にした顔で、綜司さんは箸を止めた。
「…綜司さん…?」
その様子に不思議そうな顔をした私に、綜司さんはパッといつもの笑顔に戻り
「似てないよ、真陽。僕は父さんとは違うんだから。」
そう言って再び箸を動かし始めた。
「コレ美味しいね。真陽、また料理のウデ上げたんじゃない?」
嬉しそうにそう言って料理を口に運ぶ綜司さんを見ながら
私は幼い日の泣いていた綜司さんを何故か思い出していた。