ふたつの背中を抱きしめた
4章 罪が、始まる
1.過ちの雨拍子
私が、柊くんにやっと会う事が出来たのはそれから3日後だった。
「濱口さん、ぎっくり腰になっちゃってしばらくお休みなのよ。だから柊くんにお願いして出てもらうコトにしたの。」
出勤してきた私に、園長はそう言った。
久々に会う柊くんは既に支度を済ませスタッフルームのホワイトボードの前で業務の確認をしている。
「柊くんなら正規スタッフ並みにここの仕事分かってるからね。助かるわぁ。
もちろん、こちらからお願いしたんだから謝礼もするわ。」
ニコニコとそう言った園長に、柊くんは無表情のまま頷いた。
「…そうなんですか。
…柊くん、ありがとう。宜しくね。」
柊くんは、そう言った私には頷くどころか一瞥するコトさえ無くそのままスタッフルームを出ていった。
--やっぱり嫌われちゃったな…。
胸がズキンと疼く。
でも、来てくれただけでも良かった。
それだけは安堵する。
例え私のコトが嫌いになっても、柊くんにはぬくもり園には来て欲しい。
今の彼にとってはきっと唯一必要とされる場所なのだから。