ふたつの背中を抱きしめた
ミニテーブルの上に、柊くんはケーキの乗った2つのお皿を置いた。
そして再び自分も腰をおろすと私の事をじっと見つめた。
「…あってる?」
「え?」
「…俺、こういうのやったコトないから。
おもてなしっていうの?よく分かんなくて。
…なんか間違ってる?」
私は柊くんのその言葉に目をしばたかせて
「だっ、大丈夫!何も間違ってないよ!」
と慌てて首を横に振った。
「なら、良かった。」
そう言って、柊くんはケーキを食べ始めた。
…もしかして私、柊くんの初めてのお客さんなんだろうか。
チラ、と柊くんの方を見ると彼は特になんの表情も浮かべずに黙々とケーキを食べていた。
私もケーキを食べようとフォークを持ち、そっとお皿に左手を添えると、柊くんが顔を上げてこちらを向いた。
「…それ、外して。」
「え?」
柊くんが言ったのが何のコトだか分からずに聞き返す。
「俺、ソレ嫌い。外して。」
「?何のコト?」
柊くんの言葉の意味が分からずキョロキョロと辺りを見回す。
「ソレ、左手の。俺の前では外して。」
柊くんの視線を追って私はやっとソレが指輪だと言うことに気が付いた。
「えっ、指輪のコト?」
「そう。ムカつく。」
柊くんの言葉に私はポカンとする。
「だ、だって、コレ婚約指輪だし。前も言ったけど、なるべく着けていたいから…」
私の言葉に、今度は柊くんがポカンとした。