お姫様のオオカミ
「…ハハッ」

先輩が笑う。

「詩音ちゃん、頭上げて」

「はっはい…」

頭を上げた。

「フラれちゃったなぁ」

「あっすみません…」

「いいのいいの。ダメもとだったし。それに…」

「それに?」

「諦めたわけじゃないから」

「…ふぇ?」

思わず間の抜けた返事になる。

「俺、今でも詩音ちゃんの事好きだし。諦める気ないし」

「あっぁ…」

「ごめんごめん。そんな困らせる気はなかったんだ」

「いっいえ…」

「でも、フラれてよかったかもしれない」

「え?」

「今の詩音ちゃん、すごく幸せそうだから」

「せっ先輩…」

確かに今、すごく幸せ。
玲央と一緒にいられるってわかったから。

「もしあいつになんか言われたら、俺にすぐ相談するんだよ。いいね?」

「あっはい」

「素直でよろしい。…そろそろ5分かな」

「そっそうですね」

「あいつ、すぐ来ると思うよ」

「そっそうですね…」

「詩音~!!!」

「ほらっ」

「はい」
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