幸せの刻(とき)
そんな、晩年の未来予想図に思いをはせて居たが
「婆さんや婆さん」
老紳士の怒鳴り声で
我にかえる。
「なんですお爺さん」ゴメンナサイねと会釈しながら、慌てて老婦人は部屋の奥の老紳士の元に駆け寄った。

「婆さん…ワシの大切にしてたカフスや手帳等が入った箱がないんじゃ」
「またですか、お爺さん…誰も触りませんから
お爺さんがどこかにやったんですよ」

「ワシャ、かもうとらんぞ…婆さんが収めたんじゃないんか」

なんだか夫婦の会話がピリピリし出して来ている。
私はこの場を早めに退散した方が良いだろう。
私は慌ててピースのリードを掴むと引っ張た。
…。
動かない…
足を踏ん張ってピースは動かないのだ。
私は無理やりリードを引っ張るがテコでも動かない。
なんでこんな時に、この犬は…。
私は青ざめたまま、どうすれば良いだろうと思案した。
仕方ないピースを抱えて移動させよう。
ピースを抱えようとしてしゃがんだ瞬間、ピースが走り出した。
その勢いで私は尻餅を付き、リードを離してしまう。
ピースはそのまま老夫婦が居るであろう、奥の部屋の庭に駆けて行った。慌てて追いかけようとしたが、腰を強打しすぐには動けなかった。

イタタタタタ…。

なんて犬だ。
腰をさすりながら、少しずつ立ち上がりかけた
私の耳に、ピースの
ワンワンと言う吠える声が聞こえた。
そして老夫婦喚き声。
大変だ何かが起きたらしい。
私は痛みをこらえて老夫婦とピースが居るであろう庭に駆け寄った。
ピースが庭に向かい吠え、老紳士が庭を掘っている。
一体この光景は…

私は呆然と立ち尽くす。庭を掘り起こしていた老紳士が掘るのを止める。土には何か箱らしく物が見える。
それを取り出し、老紳士が開けるとカフスや手帳等色々出てきた。
どうやら老紳士が捜していた箱のようだった。
だがなぜ庭に埋められていたんだ
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