ココロヨミ
三日目 〜人並みの幸せ〜
着信を告げるベルが机上で五月蝿く鳴り響く。
「はい、こちら―――」
『課長!』
あー、この日頃聞いたことのないような元気さと、鼻に掛かったような声は……あいつか。
「お前、昨日は何しとったんだ! 連絡もせずに勝手に休みおって!それに今何時だと思っとる。遅刻だぞ! 大体―――」
『すいません、今日は風邪で休みます! 多分昨日も風邪です!』
多分ってなんだ。多分って。
眉間にしわの寄った顔は、まさにブルドックそのもの。
「ちょいまてぃ! お前、その電話越しの声を聞く限りではピンピンしてそうじゃないか」
『あ、えーと……ゴホゴホッ。とにかく休みます……ゴホッ』
こいつ……。
「あーもういい、休め休め! お前みたいな人が怖い軟弱者がいなくて、職場も泰平そのものだ!」
「ありがとうございますっ!」
言うが早いか、電話は一方的に切られた。
(ったく……なんで人間が怖いですとかなんとか言っとるくせに、電話は普通に掛けれるんだ!)
力任せに受話器を置きながら、ブルドックは呟いた。
「おまけにあの電話越しのハキハキとした口調ときたら。まったく、それを営業で使ってほしいもんだ……」
「課長、誰からなんですか?」
ふと視線を上げると、ウェーブのかかったセミロングの黒髪の美女がお茶を持って立っていた。驚く程、スーツ姿がよく似合う。
「ああ神流君。お茶か、すまない。君が座っとる席の隣の人間恐怖症からだよ。珍しく休むんだと」
「私、昨日配属されたばかりですので……」
そう言って髪を掻き上げる仕草がまた色っぽい。
「ああ、そうかそうか、じゃああいつが出社して来たら面倒見てやってくれ」
「普通は逆なのでは?」
ブルドックは、お肉たっぷりの頬を上下させて楽しそうに笑った。
「はは! いいんだよ。あいつは特に女性に弱い。それもあんたのような凄い美人にはからっきしだからな! ベッタリ接してやってくれ。あいつの為にもな」
「まあ! 課長ったらお上手なんだから」
そう言って宇都宮 神流は、愛想のいい笑顔を浮かべて、桐原のいない席を見るのだった。
(“人間恐怖症”さんか……いったいどんな人なんだろう?)
「はい、こちら―――」
『課長!』
あー、この日頃聞いたことのないような元気さと、鼻に掛かったような声は……あいつか。
「お前、昨日は何しとったんだ! 連絡もせずに勝手に休みおって!それに今何時だと思っとる。遅刻だぞ! 大体―――」
『すいません、今日は風邪で休みます! 多分昨日も風邪です!』
多分ってなんだ。多分って。
眉間にしわの寄った顔は、まさにブルドックそのもの。
「ちょいまてぃ! お前、その電話越しの声を聞く限りではピンピンしてそうじゃないか」
『あ、えーと……ゴホゴホッ。とにかく休みます……ゴホッ』
こいつ……。
「あーもういい、休め休め! お前みたいな人が怖い軟弱者がいなくて、職場も泰平そのものだ!」
「ありがとうございますっ!」
言うが早いか、電話は一方的に切られた。
(ったく……なんで人間が怖いですとかなんとか言っとるくせに、電話は普通に掛けれるんだ!)
力任せに受話器を置きながら、ブルドックは呟いた。
「おまけにあの電話越しのハキハキとした口調ときたら。まったく、それを営業で使ってほしいもんだ……」
「課長、誰からなんですか?」
ふと視線を上げると、ウェーブのかかったセミロングの黒髪の美女がお茶を持って立っていた。驚く程、スーツ姿がよく似合う。
「ああ神流君。お茶か、すまない。君が座っとる席の隣の人間恐怖症からだよ。珍しく休むんだと」
「私、昨日配属されたばかりですので……」
そう言って髪を掻き上げる仕草がまた色っぽい。
「ああ、そうかそうか、じゃああいつが出社して来たら面倒見てやってくれ」
「普通は逆なのでは?」
ブルドックは、お肉たっぷりの頬を上下させて楽しそうに笑った。
「はは! いいんだよ。あいつは特に女性に弱い。それもあんたのような凄い美人にはからっきしだからな! ベッタリ接してやってくれ。あいつの為にもな」
「まあ! 課長ったらお上手なんだから」
そう言って宇都宮 神流は、愛想のいい笑顔を浮かべて、桐原のいない席を見るのだった。
(“人間恐怖症”さんか……いったいどんな人なんだろう?)