ココロヨミ
 初夏の日差しは暖かく、柔らかく、そして優しい。差し込む光の束は、さながら聖母の抱擁のごとく、全てを包み込む。


 なんて。

(似合わねーこと考えてるなぁ、俺)

 白馬に乗る夜魅は、後ろをふり返り、小馬鹿にしたように目を細めた。

 彼女の白い肌と合う薄手の白いブラウスに、ふわふわとしたフリルが靡くレモン色のスカート。

 昨日、急遽買いに走った洋服だが、降り注ぐ太陽の光の帯の下、爽やかな色合いは気持ちも明るくしてくれる。

(うん、予想以上に似合ってる)


 過去は変えられない。

 ならばせめて、未来だけは―――。


「……い! おい、空!」

「ん?」

 気がつくと、夜魅が頬を膨らませながら見上げていた。

「……たわけ。いい陽気だからといつまでそうしておるつもりだ?」

 ぼーっとしていたらしい。

 メリーゴーラウンドは既に停止していて、次のお客さんが馬や馬車に乗り込んでいくところだった。

「あ」

 なんとなく恥ずかしい。

 そして先に降りていた夜魅の隣には、小さな女の子がクマのぬいぐるみを大事そうに抱え、もう一方の小さな手を夜魅の左手と繋ぎながら、じっと桐原の瞳を覗き込んでいる。

 ……心なしか、どちらの目も冷ややかな気がする。

「馬鹿者、早く降りろ! この子が乗れんではないか!」
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