ココロヨミ
「で、夜魅。誰なんだ? この子」

 目の前には、ベンチに座って、バニラとチョコのソフトクリームを美味しそうに頬張る女の子が二人。

「む? ふぁふぁらんほ」

「食いながら話すな。行儀が悪い」

 会ったばかりだというのに、少女二人は既に意気投合しているようだ。

 もっとも、桐原から見れば少女の方はかなり無口で、夜魅が一方的に話し掛けているだけなのだが。

 それでも、時折嬉しそうに頷いたり、宙に浮かした足をパタパタしたりと、夜魅に懐いているのは確かなようだ。

(逆に俺の方は全く見向きもしないが)

「妬くでないぞ」

「……俺にロリコンの気はねぇよ」

「のぉ……自らに魅力が無いからと、そこまで人生に絶望しなくとも良いのではないか?」

「俺はなぜそこまで言われなきゃならん!」

「前世が悪い、前世が」

「俺の前世はヒトラーか!?」

「いや、ノーベルの発明品じゃな」

「爆発物かよ!」

 とっても楽しい会話だった。

 桐原と夜魅の間に挟まれた少女はそんなやり取りが面白いのか、口のまわりをベタベタに汚しながら笑顔で夜魅を見つめている。

 その夜魅はというと、こいつ……女の子よりも酷い。ほっぺまでクリームでベッタベタにしていた。

「お前は子供(ガキ)以下か?」

「うるさい! お前と言うな、お前と! このような甘〜くて冷た〜くて美味な物は初めて食べたのだ! ……ソフトクリームとか言ったか?」

「ああ……」

「もう三つほど追加で買ってきてくれ!」

「食い過ぎだ! 腹こわすぞ、バカ」

 閑話休題。

 桐原はだだをこねる夜魅をなだめ(ついでにハンカチで口元を拭ってやり)、話題を少女の方に持っていった。

「うむ。メリー……なんとかが止まった後だと思うのだが、いつの間にか私の後ろにくっついて来ておってな、一向に離れようとせんのだ」

 そう言って、桐原から借りたハンカチで、少女の口元を綺麗に拭き取ってやる。

「そうだ、まだ名前を聞いておらんかったな。のぉお嬢ちゃん、名は何という?」

「……よみ……お母さん」


『は!?』


 見事に二人の声がシンクロした瞬間だった。
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