ココロヨミ
「夜魅に似てるんじゃないかな?」
「この子の母親がか?」
少女は泣き疲れたのか、夜魅に膝枕する形でスヤスヤ眠っている。
夜魅によると、この子の名前は『瞳』。この遊園地に着いてすぐ、人混みに流されて母親とはぐれたらしい。
「ああ。あんなに夜魅を見つめて『お母さん』って言ってたんだし」
「私に似ているなら、きっと絶世の美人だろう」
「自分で言うか?普通……」
呆れ顔の桐原は、瞳のテディベアを両手で抱えている。
「なぜだ?事実だぞ、しかたがないと思うがな」
夜魅は当然のように言ってのける。
……悪気は全くないらしい。
(よく言うよ!)
そう思ってはみたものの、昨日と比べて夜魅が明るさを見せてくれるようになったのが、桐原には嬉しかった。
夜魅もそんな桐原の心証を察してか、それ以上その話題を続けようとはしなかった。
「しかし便利だよな」
桐原は感心したように夜魅に問う。
「寝てる人の心から、何でも引き出せるなんてな?」
「“何でも”……というのは語弊があるな。寝ている状態ではこちらの問い掛けに心が応じ易くなるのだ。まぁ五分五分といったところか」
「ふ〜ん……あ゛!もしかして俺の寝てる時にも……?」
「独身、22歳、彼女いない歴も等しく同じ、人間恐怖症に女性恐怖症、おまけに血も苦手。甘ちゃん。馬鹿」
「それって殆ど最初に会ったときに聞いたよーな……って最後の方は要らん!」
「安心しろ、人の寝込みを襲うような真似、してはおらぬよ」
そう言って桐原の安堵した顔を見た夜魅は、破顔一笑、面白そうにククッと吹き出した。
「……っ!んの〜!」
顔を赤らめながら夜魅に抗議する姿は、端から見れば明らかにカップル、瞳も含めれば新婚の子連れに見えなくもないなのだが。
運命の女神は気まぐれだ―――
「この子の母親がか?」
少女は泣き疲れたのか、夜魅に膝枕する形でスヤスヤ眠っている。
夜魅によると、この子の名前は『瞳』。この遊園地に着いてすぐ、人混みに流されて母親とはぐれたらしい。
「ああ。あんなに夜魅を見つめて『お母さん』って言ってたんだし」
「私に似ているなら、きっと絶世の美人だろう」
「自分で言うか?普通……」
呆れ顔の桐原は、瞳のテディベアを両手で抱えている。
「なぜだ?事実だぞ、しかたがないと思うがな」
夜魅は当然のように言ってのける。
……悪気は全くないらしい。
(よく言うよ!)
そう思ってはみたものの、昨日と比べて夜魅が明るさを見せてくれるようになったのが、桐原には嬉しかった。
夜魅もそんな桐原の心証を察してか、それ以上その話題を続けようとはしなかった。
「しかし便利だよな」
桐原は感心したように夜魅に問う。
「寝てる人の心から、何でも引き出せるなんてな?」
「“何でも”……というのは語弊があるな。寝ている状態ではこちらの問い掛けに心が応じ易くなるのだ。まぁ五分五分といったところか」
「ふ〜ん……あ゛!もしかして俺の寝てる時にも……?」
「独身、22歳、彼女いない歴も等しく同じ、人間恐怖症に女性恐怖症、おまけに血も苦手。甘ちゃん。馬鹿」
「それって殆ど最初に会ったときに聞いたよーな……って最後の方は要らん!」
「安心しろ、人の寝込みを襲うような真似、してはおらぬよ」
そう言って桐原の安堵した顔を見た夜魅は、破顔一笑、面白そうにククッと吹き出した。
「……っ!んの〜!」
顔を赤らめながら夜魅に抗議する姿は、端から見れば明らかにカップル、瞳も含めれば新婚の子連れに見えなくもないなのだが。
運命の女神は気まぐれだ―――