ココロヨミ
「ほら、そこの看板に迷子センターって書いてあるだろ?そこに行ってみよう。もしかすると瞳ちゃんのお母さん、そこにいるかもしれない」

「お母さん……いる?」

「いるよ、きっと」


どうやらずっと我慢していた後に大泣きしたら、桐原への警戒心も解けたらしい。


桐原は、しゃがみ込むと、優しく瞳の頭を撫でながらほほえんで見せた。

人間恐怖症兼女性恐怖症(幼女含む)の桐原にしては、自分でも信じられない行為だったのだが。


「うん!」

瞳も嬉しそうな顔で、桐原を見つめ返す。


「おい、空」

「っ何だよ!」

服の裾をぐいぐいと引っ張っている夜魅を半ば強引に振りほどくと、彼女はふてくされたような顔を見せた。


どうやら瞳にばかり構っているので、拗ねているらしい。


(ったく、かわいい奴め)

「なぁっ!?」

冗談でそんな事を思ってみると、面白いように顔を真っ赤にして動揺してくれた。


「な、な、なななななな泣くぞ!」

「勝手に泣け!」


案外分かりやすい娘かもしれないな……。
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