ココロヨミ
不安的中。ド真ん中100点だ。

夜魅は逃げたんだ……俺に何も言わずに。

(何も言わず……)

もうこの街にはいないかもしれない。

(いない……)


ああ……体から力が抜けて―――



「ダメだ!」

思わず人目を気にせず叫んでいた。

何事かと通りすがりのサラリーマンが驚きの視線を送ってくる。


唇を血が出るほど噛み締め、逃げかけた力をギリギリで踏みとどませる。

俺がずっと側にいてやるって決めたじゃないか。

「だろ?夜魅」


『空―――……』


微か、ほんの微かだが、一瞬夜魅の心が聞こえた気がした。


勿論桐原には夜魅のように心を読むなんて力は無い。

だが、風邪で朦朧とし始めた桐原の頭のチャンネルは、本能的に本来聞こえない筈の夜魅という周波数を捉えた。


『やぁ……止めろと言っておろう!い、嫌ぁ!助け、誰か……空……』


夜魅の心の悲痛な叫びが飛び込んで来る。

今度はハッキリと捉えた。近い!

もう、掴んだこの周波数は離さない!


桐原は躊躇(ためら)わなかった。真っ直ぐ己の心の指し示す方へ駆け出す。

(間に合え!石川に、あんな奴なんかに……)



お前の自由(せかい)は奪われちゃいけないんだ―――
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