依存の空
水底の誘惑
水の底に手を付いた。
息ができない、苦しい。
あの日、トオルと一緒に世界は滅んだのだと思ってた。
狭い狭い私の世界の中心が隣にいなければ呼吸もできないから。
だけど、私の息の根が止まることはなかった。
トオルのいない世界はまるで暗い深海の底みたいでどこまでも広くってどこまで行っても闇の中。
ここが、新しい私の世界。
広くて真っ暗で不安で息苦しい、トオルのいない、私の、生きる場所。
1人水底に取り残された私は、狭い狭い私の世界の、国境を探していた。